アルパイン ブランドストーリーアルパイン ブランドストーリー
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革新
05

“ヘッドユニット”が、
車内空間を変えた。

新ジャンルを拓いた7155J

2023.03.17

海外の大ヒットモデルを、日本市場へ。

“ヘッドユニット”という言葉が、カーオーディオの世界にはある。いまではカーオーディオを語るうえで当たり前のように使われているが、実はこのヘッドユニットの名付け親こそ、アルパイン。そしてヘッドユニットの魅力を日本中に広め、爆発的なヒットとなったモデルが存在する。アルパインの名機、「7155J」だ。

 

あらためて7155Jがヒットした理由を紐解けば、そこには時代背景が大きく影響していたことが分かる。80年代初頭のことだ。日本が世界一の自動車生産国となり、国内の自動車メーカーから次々とニューモデルが生まれ、自動車業界が華々しい時代へと突入していった。いいクルマを求める人が増えれば、当然いい音を求める人も増えてくる。高級カーオーディオブランドとしてグローバルで製品を展開していたアルパインの存在感は、年々高まっていた。

 

この時期、日本と海外のカーオーディオを比較した時に、ひとつ大きな違いがあった。もともと車載用の音響機器はホームオーディオの影響を受けてきた経緯があり、コンポーネント、すなわちカセットプレーヤー、チューナー、アンプなどがそれぞれ成長を遂げていた。とくに日本市場ではコンポをクルマへ、という概念が顕著であった。ユーザーは愛車のセンターコンソールに、カセットプレイヤーを始めとする数種類の音響機器を設置し、ホームオーディオさながらの圧倒的な存在感に喜びを感じていた。それはリビングや自分の部屋のいちばんいい場所に、ホームオーディオを置く感覚に近いものがあった。一方、アメリカやヨーロッパの価値観は逆で、シンプル&ベーシックな考え方を持ち、1DINサイズのコンパクトなボディの中に高機能を凝縮した、一体型ワンボディのカーオーディオが好まれていた。

 

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ヘッドユニットという、新しい思想。

アルプス・モトローラ時代から、欧米で積極的にビジネスを広げてきたアルパインは、こうしたカーオーディオを取り巻く状況やオーナーの価値観の違いをリアルに感じていた。そんな中で海外向けに発売されたのが7155である。

 

アルパインの7155は、カセットプレイヤー、チューナー、アンプのそれぞれがコンパクトな1DINサイズの中に一体化されており、それでいて各機能がハイグレードであった。また製品として最先端だっただけでなく、ヘッドユニットというこれまでにない思想を提唱し、カーオーディオの新ジャンルを拓いていった。

 

ヘッドユニットとは、何か。それまでもカセットプレイヤーやチューナー、アンプが一体化したワンボディと呼ばれるモデルあった。しかし7155のようにハイグレードで、かつ発展性があるモデル、すなわち7155を音の入り口・中心にしつつ、高出力のアンプも追加して4スピーカーシステムにグレードアップしたり、サブウーファーを加えたシステムに発展させることが簡単にできるようになると、もはやワンボディという呼び名は似つかわしくなかった。そこでアルパインはこうした製品はワンボディではく、“ヘッドユニット”という新ジャンルのモデルであると、高らかに宣言したのだ。

 

7155は、欧米で大ヒットモデルとなり、アメリカのオーディオ専門誌「オーディオ&ビデオ」誌によるオートサウンドグランプリを2年連続で受賞するなど、音への評価も高いものがあった。そしてアルパインは、ついにこの製品を「7155J」として日本に導入することを考えた。

 

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コクピットはシンプルに。サウンドは壮大に。

しかし当時の日本の市販カーオーディオは、まだまだコンポ思想の時代。そんな状況の中で、7155Jをどのようにアピールしていくか。アルパインは日本のカーオーディオ市場やターゲットの嗜好をあらためてマーケティングした末に、製品の性能やスペックを前面に出すのではなく、まず洗練されたライフスタイルを提唱することで若者との共感を築くことにした。

 

たとえば当時のカタログ「The Alpine 7155J Story」は、輸入車に乗る男性がドライブを楽しむシーンを中心に構成されている。折り込まれたページを開くと、ようやく製品の写真や説明が出てくる。ヨーロッパ調のシックなブラックフェイス、グリーンに光る操作キー…。7155Jのデザインは、確かに高級感があり、それまでの国内モデルとは異なる洗練されたイメージをもたらしてくれた。それに加えてヘッドユニットという新しい思想が丁寧に説いてあり、コンポーネントのカーオーディオに対し違和感を持っていた若者たちの価値観にしっかりと合致した。「海外で売れたとはいえ、同じように日本で売れるのか」。そんな心配をよそに、7155Jは製品が持つ高いパフォーマンスに加えて、ヘッドユニット思想やライフスタイル訴求のコミュニケーション戦略によって、日本でも瞬く間に注目を集めていった。

 

主張しすぎず洗練されたセンターコンソール。それでいて、オーナーが望めば、よりいい音を楽しめる環境。コクピットはシンプルに。サウンドは壮大に。7155Jは、コンポが主流だった日本のカーオーディオ市場に、ヘッドユニットという新たな価値と選択肢をもたらした。結果7155Jは大ヒットモデルとなり、クルマの室内空間を革新していったのである。

 

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