アルパイン ブランドストーリーアルパイン ブランドストーリー
BRAND STORY
思想
軌跡
革新
08

新しい時代に、
新しいカーライフを。

アルパインドライブの世界

2023.04.28

海の向こうに実在する道、アルパインドライブ。

アメリカ・ロサンゼルス。ビバリーヒルズの高級住宅街を抜けていく、一本の通りがある。アメリカらしい余裕ある道路の両側には、手入れの行き届いた芝生のグリーンベルトが連なる。青空のもとでクルマを走らせると、整然と植えられた街路樹の葉の間から、キラキラと日差しのシャワーが心地よく降り注いでくる。道路沿いに立ち並ぶ家は、どれも広々とした敷地の中に建てられている。高級コテージのような家もあれば、北欧風の木造の家、上品な佇まいの大邸宅もある。その通りの名は「アルパインドライブ」。そう、偶然にもアルパインと同じ名がつけられている道が、ロサンゼルスに存在しているのだ。

 

遠く離れたアメリカのこの道と、私たちアルパインが交差するストーリーは、1980年代初頭まで遡る。その頃、日本の自動車産業は右肩上がりに伸び、自動車生産台数はついに世界一となった。自動車メーカーから次々と新しいモデルが発売され、ラインアップの裾野が広がり、若者がメインユーザーのひとつになっていた。かつてクルマは簡単に所有できないほど高価であったが、この時代の若者にとって家にクルマがあるのは決して特別なことではなく、クルマとともに日常を過ごし育ってきた背景があった。

 

08-02.jpg

 

 

クルマと音楽とともに生きてきた若者に向けて。

一方、日本の音楽シーンにも、大きな変化があった。カセットプレイヤーを携帯して外で気軽に音楽を聞くという文化が生まれ、生活と音楽が密接に結びついた。家のオーディオも、部屋の一面を占領していたシステムコンポから、ベッドサイドにも置けるミニコンポへと移行しつつあった。また海外からやってくる音楽が広く親しまれるようになり、音楽好きの若者は毎週発表されるアメリカのヒットチャートに注目し、洋楽のミュージックビデオがお茶の間のTVに当たり前のように流れ始めた。

 

つまり、この頃の若者は、クルマと音楽が身近にある中で育ってきた世代だった。

 

そのような若者たちに向けて、アルパインは自社製品の性能の高さや品質の良さを愚直にアピールしていた。自分たちの製品は性能がいいのだから、それを分かってもらえれば売れる。品質の良さがしっかりと伝われば売れる。そう信じていた。カタログにはその想いがあふれていた。しかし、それだけでは若者たちの支持を得ることができず、思いのほか売上げは伸び悩んでいた。

 

08-03.jpg

 

 

アルパインドライブ、というカーライフを。

アルパインはマーケティング戦略を見直す決断をした。いきなり自分たちの製品の自慢話を始めても振り向いてもらえない。そこで、いつもクルマと音楽が隣にあった当時の若者たちに共感してもらえるようなカーライフを提案することにした。それはどんなカーライフなのか。どこにあるのか。アルパインであるべき理由があるのか…。彼らが夢見るカーライフと、高音質であるアルパインとの接点を探し求めた。

 

あった。それがアルパインドライブだった。

 

ロサンゼルスのビバリーヒルズで、ロケを行った。アルパインドライブの通りとその周辺の道に存在していたのは、当時アメリカからやってきた音楽の舞台、そのものだった。曲で描かれていた風景が、そこにあった。そしてアルパインには、そうした曲の世界をピュアに再現できるプロダクトへの自信があった。ロサンゼルスの道とアルパインが、パズルのピースのように結びついた。

「この街、この暮らし、そしてクルマと音楽が彩る毎日を、アルパインドライブと名付けよう」。出来上がった新しいカタログには、そんな文章が綴られていた。上質な音を聞きながら、ハッピーな気持ちで、明るい日差しの中を気の合うパートナーとドライブを楽しむ。それこそがこれからのカーライフじゃないか。そのカーライフに、私たちは『アルパインドライブ』と名付けて若者たちに提案したのだ。

 

 

08-04.jpg

 

 

確実に増えていった、アルパインファン。​​​​​​​

アルパインドライブの世界を、たっぷりと写真と文章で綴った新しいカタログは、予想以上の反響を呼んだ。カタログを家に持ち帰って何度も読んだという人もいた。販売店のスタッフから聞く評判の良さに、アルパインのセールスマンも勇気づけられたと言う。カタログを通じたコミュニケーションは決して派手ではなかったが、ページの最後までアルパインドライブの世界に浸れるそのつくりは、クルマと音楽を愛する若者たちから共感を得ることができた。それまでアルパインが求めていたお客様との情緒的なつながりを、カタログを読むその時間だけ獲得することができるようになった。そうして、アルパインのファンは確実に増えていったのである。

 

このアルパインドライブの経験は、その後もアルパインブランドの構築に活かされた。大切なのは、アルパインの製品を通じて、いかにお客様のカーライフをいいものにしていくか、いかに移動中の空間をいいものにしていくかということ。それは今のブランドスローガン「Emotion in Mobility」に通じる想いだ。

アルパインドライブ以降も、アルパインは新しいカーライフを提案してきた。カーライフの創造。今それはアルパインの使命のひとつになっている。

 

08-05.jpg