見て、触れて、
ブランドを感じる。
キーが伝えるアルパインのデザイン
操作キーは、アルパインのデザインの象徴。
自分の愛車は、特別な空間だ。特にコクピットは、走り出せば何時間も視界に入り続けることがあるだけに、機能性だけでなくデザイン性についても重視する人が多い。だからこそアルパインは、オーディオにしてもカーナビにしても、そのデザインにこだわり続けてきた。
そんなアルパインのデザインの象徴と言える部分がある。操作キーだ。ともすれば機能に特化しがちなキーのカタチが、色が、演出が…、今もファンの方々の間で熱く語られることがある。いったい何がそれほど特徴的なのか。このアルパインのキーデザインについては、1980年代まで遡ってストーリーを語らなければならない。
1980年代、それはカーオーディオが全盛期だった時代だ。自分の好きな音楽をクルマの中で楽しむ。その時にアルパインはいい音を提供するだけでなく、コクピットという空間がより魅力的になるように、製品のデザインにも並々ならぬこだわりを注いできた。その最たる部分が操作キーであった。コクピットでアルパイン製品を選んでくださったお客様の気持ちを満たせるように、かつ使いやすくあるように、幾多のキーデザインが採用された。そしてアルパインのキーが一気に注目を浴びることになる。ヘッドユニット7155Jの登場だ。この7155Jに採用されていた鮮やかなグリーンに点灯する「照光キー」が、多くのドライバーの心を惹きつけたのだ。
高品位な照光キーが、車内空間を演出した。
7155Jに採用されたグリーンの照光キーは、製品の右下に整然と二段に配置されていて、主張しすぎない上品さがあり、それでいて存在感があった。グリーンの輝きの加減も絶妙で、決して派手に光るのではなく、品のある灯りでコクピットを演出した。特に夜のドライブの時の鮮やかさが好評で、いつもの道をクルマで走らせることさえも特別なひとときにしてくれた。実はこのキーは、表面をフロスト処理、側面を鏡面処理することでガラスのような質感を再現しており、またキー全体を均等に光らせるためにツーピースの構造にすることで斜めから見てもガラスのような透明感が出るようにしている。コストも手間もかかる構造だが、それでもデザインへの強い想いから採用したのである。この7155Jの大ヒットによって、その後に続く製品にも広くグリーンの照光キーが採用され、やがてアルパインのデザインシンボルになっていった。
時代のトレンドとともに、色はグリーンからブルーへと変化したが、照光キーはアルパインらしさを伝える重要な役目になっていた。2000年に登場した初代「AlpineF#1Status」では、ブルーに発光する6つボタンが圧倒的な高級感をもたらしていた。また他のモデルにおいても、1個、4個、6個と数は違えど、アルパイン製品を象徴するデザインとして照光キーを採用。たとえばカー用品店に足を運んで他社の製品とともにずらりと並んだカーオーディオのディスプレイを見ても、アルパインの製品は照光キーを通じてひとつひとつが同じブランドのもとに存在していることを静かに物語っていたのである。
キーは、ユーザーとブランドが最も触れる場所。
やがてコクピットの主役は、カーオーディオからカーナビゲーションへ移っていった。ここでもアルパインブランドのデザインの象徴として、キーが存在感を放った。ビッグXシリーズでは、車種専用設計の思想に基づいて、キーの形状やその光の演出も車種ごとに多岐にデザインされた。なかでも2016年発売のビッグX 11で採用されたクリスタル照光キーは、江戸切子から着想を得たカット面とブルーの点灯色がひときわ美しいものであった。そこには脈々と続くアルパインのキーデザインのアイデンティティと、ビッグX 11という最新カーナビの先進性、そしてアルパインが日本発のブランドである誇りが融合されていた。
キーというのは、製品の一部分にしか過ぎない、小さなパーツだ。しかしクルマに搭載するカーオーディオやカーナビゲーションにとっては、大きな役割を担っている。ユーザーが製品に直接触れることが最も多い部分だからだ。それはユーザーとブランドが最も触れる部分と言ってもいい。人が製品を操作しようとしたとき、まず自分の目でキーの位置を確認し、次に指で触れる。つまり目に触れる、指で触れる、そういうパーツなのだ。キーひとつでも、お客様がよろこびを感じるものであるように。これからもアルパインのデザインは細部にまでそのこだわりを注いでいく。